「2023年になってから、ソーシャルVR『VRChat』の公式パートナー企業が急速に増えつつあります。」
みたいなテキストを、今年は連載原稿とかに何度も書いている。だいぶ増えてきた印象。そして、そろそろ「どこが公式パートナー企業になったか」がわからなくなってきた。加えてその多さの割に、どのメディアも情報としてあんまりまとめてない。
というわけで、備忘のためにも、「VRChat」と公式パートナーシップ契約を結んだ企業などを一覧として書き出していく。
(サムネイル作成:Canva、サムネイル画像:Generated by Midjourney)
- 公式パートナーシップ契約を結ぶとどうなるか
- 2022年以前
- 2023年
- 非法人
公式パートナーシップ契約を結ぶとどうなるか
通常は規約違反となる行為や、そもそも一ユーザーアカウントからはできないことができるようになる、らしい。具体的には以下のようなことがよく挙げられる。
- 有料イベントの開催
- 通常は規約違反。
- 制作したワールドをすぐにパブリック公開できる
- 通常、公開直後のワールドは「Community Labs」という区分で表示され、設定をいじらないと検索に表示されない。
- 「Community Labs」を抜けて公開ワールドへ昇格するには、一定以上の訪問が必要。この過程をスキップできる。
- 広告出稿
- デフォルトのホームワールドにでっかく広告を貼ることができる。キティちゃんとかね。
- 「バーチャルマーケット」などの事例を見るに、ワールドメニュー上に特設のセクションを作ってもらうこともできそう。
- 外部リンク誘導
- ワールド内の特定の物体にふれるとWebページが開き、誘導をかけられる。地味にこれは公式契約じゃないとできないらしい。
- いちおう有志ツールでも実現できるツールはあった気がするが、ユーザー側も同じツールを導入しないといけないので、企業施策としてはあまり現実的じゃなさそう。
2022年以前
HIKKY
なにをしているところ?
時期
2020年4月までには?
詳細
「バーチャルマーケット」運営企業としてご存知の方も多いはず。会期中にワールド一覧に特設コーナーが設けられているので、おそらくパートナーだろうとは思っていたものの、軽く調べた範囲ではそれらしきプレスリリースが出てこなかった。
ただ、CVOの動く城のフィオさんが昨年出した『メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方』の一部抜粋記事に、「Vket4からは、プラットフォームとして使っていたVRChatとも、本格的にパートナー契約を結ぶことができるようになりました。」とある。これが正であるならば2020年4月には公式パートナーシップを結んでいたということになりそう。
Gugenka
なにをしているところ?
- VR/ARデジタルフィギュアビューワー「HoloModels」開発
- 3Dアバター作成アプリ「MakeAvatar」開発
- メタバースイベント、バーチャルイベントの開催
- IP公式デジタルコンテンツストア「XMarket」運営
- etc.
時期
2020年12月?(法人契約代行サービスは2022年2月24日から)
詳細
「SANRIO Virtual Fes」などを手掛けている、バーチャル方面では有名な企業。2022年2月24日から「VRChat」の法人契約代行サービスをスタートしている。日本国内で「VRChat公式パートナー企業」が本腰入れて注目されたのはこのあたりな印象。
#VRChat とGugenkaが公式パートナー契約🎉
— Gugenka公式 (@Gugenka_info) 2020年12月18日
常設ショッピングモール型ストア
XRShop World(#XWorld )12/29プレオープン!
日本の自然風景をテーマとしたVR空間で、世界のユーザーとつながろうhttps://t.co/K8zBhrLj1o
↓つづく pic.twitter.com/Z2xnlQz5Kp
このタイミングで公式パートナー契約を結んだ……ように見えて、2020年12月18日にショッピングモールワールド「XWorld」オープンを告知した際に、公式パートナー契約を結んだことを発表している。よく考えれば「SANRIO Virtual Fes」初回開催は2021年末だった。
BOOTH
なにをしているところ?
- クリエイターズマーケット。クリエイター制作物の売買ができるプラットフォーム。
時期
2022年11月25日
詳細
アバターやお衣装の販売先として、たぶん国内シェア率トップ。2022年11月25日に「VRChat」との提携を発表した。この"提携"が、運営元のピクシブ株式会社との公式パートナーシップ契約を意味するのかはわからない……が、「BOOTH」ページに飛べるアセット「BOOTH Lens」の配布もやってるあたり、そんな感じな気がする。
2023年
AWS
なにをしているところ?
時期
2023年2月6日
詳細
Amazon Web Servicesではない。AWS株式会社という富山県に本社がある企業で、見たところごく普通の業務アプリケーション設計・開発、導入・保守をやるところっぽい。
「VRChat」を使用する商用イベント、企業広告・ブランディングなどをやるそうで、「VRChat」以外にも「UE5を使用したオリジナルツール等の開発、提案」「AR/MRに関わる共同開発・研究・提案」などをやるそう。ただ、具体的な実績については、筆者は耳にしたことがない。
9月23日には株式会社ModelingXという会社が、ワールド制作の分業提携を行ったらしい。こちらも富山県の会社。事例紹介されているワールドも「TOYAMA by ModelingX-JP」という名前。富山県でローカルなVRChat事業コネクションが生まれているのかもしれない。
往来
なにをしているところ?
時期
2023年3月9日
詳細
おしらせ🎉 株式会社往来はVRChat社と正式にパートナー契約を締結しました! これからもVRメタバースでクリエイターと企業の架け橋として活動して参ります
— 往来 🌐 メタバース × マーケティング (@ouraiVR) 2023年3月9日
当社ではVRChatの商用利用につきまして企画立案から制作・広報まで、幅広く対応が可能です。ぜひご相談ください pic.twitter.com/8tGYOcxRfy
日産自動車やモスバーガーの「VRChat」進出を手掛けてきた企業。2023年の公式パートナーシップ契約の先駆けで、以後もコンスタントに企業進出などを手掛けている。
代表のぴちきょさん含め、関係者が軒並み「VRChat」大好きなコアユーザー。この人たちが見込んだクリエイターに声掛けしてお仕事を依頼していることもあり、コミュニティ知名度も高め。
イアリンジャパン
なにをしているところ?
- 映像制作(バーチャル系多し)
- 「次元少女 亜空間こねる」原作元
時期
2023年3月16日
詳細
チェコ・プラハ発の映像制作会社・イアリンの日本スタジオ。「KAMITSUBAKI STUDIO」や「Project:;COLD」、あとポケモンSVのナンジャモの動画あたりがピンとくる人の多そうな実績。
「VRChat」では、2022年にアートイベント「Wacom Connected INK」にて特設ワールド「Metamorphosis」などを手掛けている。この公式パートナーシップ契約に合わせて、クリエイティブチーム「MIGIRI」を設立しているのが特徴で、VRChatワールド探索部のタカオミさんがディレクターとして所属しているあたり、かなり気合が感じられるところ。
Any Gold Trust
なにをしているところ?
時期
2023年4月18日
詳細
意外な角度からの参入。不動産業の実務をVR空間で行うべく、「東京かまた不動産VRChat支店」の設立・運営を目指すとのこと。2023年6月ごろにワールド自体は公開されており、おそらく運用待ちの状態と思われる。
前田拓郎法律事務所
なにをしているところ?
時期
2023年6月14日
詳細
これも意外な角度からの参入。とはいえ、扱っている分野を踏まえると順当な参入と言えそう。パートナーシップ契約は、「VRChat」上でのイベント・セミナー開催、法律相談の実施が目的だそう。実際、6月には2回「VRChat」で無料の法律相談会が実施されている模様。
ちなみに、こちらの代表弁護士の方とは「VRChat」でお会いしたことがある。普通に飲み・クラブインスタンスでも遭遇したことがあり、割と純粋に「VRChat」を楽しまれているみたいでした。
メタバースクリエイターズ
なにをしているところ?
- メタバースクリエイターのプロデュース及びマネージメント(自分はこの点を指して「クリエイタープロダクション」と呼んだりしている)
- メタバースコンテンツの企画、制作、販売、配給、配信
- 著作権その他の知的財産権の取得、管理
時期
2023年6月21日
詳細
いまいちばんイケイケそうなところ。「VRChat」でも有名なクリエイターが複数在籍していて、ワールド制作やなにかしらの案件を回している。グローバル展開も意識しているようで、実際8月に国際交流イベントも開いている(ワールドもここが制作)。
ちなみに、「VRChat」にとどまらずメタバース全般をフィールドに定めていて、直近だと所属クリエイター数名が「ZEPETO」に進出していたりする(参考)。
姫宮VIGサービス(※業務提携契約)
なにをしているところ?
- 店舗型VRChat体験サービス「スグバース」運営(今秋開業予定)
時期
2023年8月4日
詳細
プレスリリースでは「業務提携契約」と記されているので、もしかするとパートナーシップ契約ではないかもしれないが一応。
たぶん全国的にも初となる「お店行けばVRChatの体験ができる」という店舗を開こうとしている。今秋、東京でオープン予定。
V
なにをしているところ?
時期
2023年8月28日
詳細
「VRChat」だと、「ANREALAGE」のデジタルウェアを発売したところ(参考)か、アバター改変の画像を投稿できる「kaihen」の運営として知っている人がいそう。
今後は「ブランドとのアバター制作・販売」「アニメIPとのワールド制作」といったところに取り組むとのこと。「ANREALAGE」を持ってきたあたり、おもしろいこと仕掛けてきそうな予感はある。
10月2日には、合同会社アシュトンラボ(2023年6月末解散)よりWEBメディア「メタカル最前線」を事業譲渡されている。「メタバース領域特化のメディア運営」が、事業領域に加わった形。
スケブ
なにをしているところ?
- コミッションプラットフォーム「Skeb」運営
時期
2023年9月1日
詳細
クリエイターへ有償でイラストなどのリクエストができる有名なプラットフォームの運営企業。
意外な参入……と見せかけて、「Skeb」上での取引の13%超が「VRChatの自分のアバターのイラスト依頼」らしく、実は相性のよいプラットフォーム。自分の知り合いもコミッション費用が毎月えらいことになっている人がいる。ちなみに代表取締役の喜田一成氏ことなるがみさんも「VRChat」コアユーザーで、後述のポリゴンテーラーコンサルティングの代表取締役でもある。
今後は「Skeb」でリクエストしたアバターイラストを展示するアートフレーム開発などを進めていくそう。これはけっこうユーザーに刺さりそうな予感。
ポリゴンテーラーコンサルティング
なにをしているところ?
時期
2023年9月1日
詳細
主な実績は即売会イベント「メタフェス」主催、JT公式ワールドの制作、アパレルブランド「FACETASM」のVRChat向け衣装展開など。アバター・衣装ブランド「IRODORI clothing」も展開中。
バチバチに「VRChat」で事業を展開してる企業なので、パートナーシップ契約は順当なところ。11月に開催予定の「メタフェス2023」で早速活かされそうではある。
ポリゴンテーラー
なにをしているところ?
時期
2023年9月1日
詳細
9月1日に僕が代表を務める株式会社スケブ、株式会社ポリゴンテーラーコンサルティングに加え、株式会社ポリゴンテーラーの3社がVRChat社のオフィシャルパートナーになりました!
— なるがみ (@nalgami) 2023年9月11日
元々VRChatイベントカレンダーはスポンサーをさせていただいていましたが、法人窓口も今回から担当することになりました! https://t.co/nMN6xX1JRx
「アバター改変代行」という営みにいち早く取り組み始めた企業。ただ、直近では表立った動きは見られない。公式パートナーシップ契約は、後述の「VRChatイベントカレンダー」の公式パートナー化に合わせたもの、とのこと。
バーチャルパーティー
なにをしているところ?
時期
2023年9月4日
詳細
📢重要告知
— 株式会社バーチャルパーティー | VRアナログゲーム製作 イベント開催 (@virtualparty_co) 2023年9月4日
VRTRPGアナログゲーム制作会社「株式会社バーチャルパーティー」が米「VRChat社」と正式パートナーシップ契約を結びました。https://t.co/jjwgam4AYP
VRの世界にVRTRPGやボードゲームなどの新しいコミュニケーション型の遊びを提供していきます。#ばちゃぱ #CatsUdon #VRChat pic.twitter.com/1Do7DI5CMu
VRTRPGコミュニティ発の新設企業。「VRChatでこの世すべてのTRPGをできるようにする」というコンセプトで開発されたVRTRPG支援システム「CatsUdon」を作っている。言うなれば「VRChat」でマイクラができるというシロモノで、演劇舞台装置にも転用される汎用性の高さを誇る。これをフル活用する体験イベントも毎週開催されている。
直近では11月に大型イベント「バーチャルダイスパーティーwith冒険企画局」を開催予定で、このイベントもVRChat公式パートナーイベントとして開催予定とのこと。
MyDearest
なにをしているところ?
- VRゲーム開発。代表作に『東京クロノス』『ALTDEUS: Beyond Chronos』『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』など。最新作に『Brazen Blaze』。
- VRゲームパブリッシング事業。第1弾は『Squingle』。
時期
2023年9月14日
詳細
国内VRゲームメーカーの代表格。『ALTDEUS: Beyond Chronos』が「Oculus Quest Store」でユーザー評価1位を獲得したり、「ファミ通・電撃ゲームアワード2020」のアドベンチャー部門で最優秀賞を受賞したりと、評価の高い作品を送り出している。
もともと「VRアジト」というDiscordコミュニティを運営しており、VRゲームユーザーとソーシャルVRユーザーをつなげ、VR業界全体の活性化を図る取り組みを行っている。VRChat公式パートナーシップ契約はその路線に沿った展開。第1弾として、VRChatに自社のバーチャルオフィスワールドを作っている(参考)。
ホビージャパン
なにをしているところ?
時期
2023年10月2日
詳細
創業50年の老舗ホビー企業。2021年にVRインディーゲームイベント「GameVketZero」に出展した後、2023年4月に専門部隊「ホビージャパンVR部」を設立。公式ワールド「ホビージャパン駅前商店街」や、ボドゲが遊べるワールド「Esperaization Cave」を公開。さらにそのワールドでユーザー参加イベントを開催している。
メタバース参入したいホビー企業のサポートや、VRクリエイターの支援などを行っていくとのこと。横のつながりもできているのか、上述の「バーチャルダイスパーティーwith冒険企画局」にも出展・協賛していたりする。
カシオ計算機
なにをしているところ?
- 電機メーカー。時計、電子辞書、電卓、電子文具、電子楽器、ハンディターミナル、電子レジスター、経営支援システム、データプロジェクター、成形部品、金型など。
時期
2023年10月3日
詳細
あのカシオ。有名なものが多すぎる。
「VRChat」参入にあたって持ち出されたのは腕時計の「G-SHOCK」。仮想店舗をオープンし、自分だけの「G-SHOCK」をカスタマイズして遊べるコーナーなどが提供される。プラスして、「BOOTH」でデジタルアイテムを販売したり、人気アバターとのコラボまで考えていたりと、かなり本腰を入れて上陸しにきている。
非法人
調べてみたら「法人ではないパートナー」がいた。そして2023年9月にぬるっと事例が増えた。別個セクションとしてご紹介。
イマーシブクラウド
なにをしているところ?
- VR空間での体験型エンターテイメントコンテンツ提供。代表的なものはマーダーミステリー。
時期
2020年11月20日(※下記バチャマガの日付準拠)
詳細
2019年9月に設立された団体。マーダーミステリーなどを開催しており、公式パートナーシップ契約は「有料公演」の開催が目的とのこと。
このプレスリリースを読む限りでは、2020年12月の最初の有料公演が、そこから2023年までにかけて20本の無料公演、1本の有料公演を開催しているようである。ただ、2023年現在も公式パートナーシップ契約が続いているかは調べきれていない。
VRChatイベントカレンダー
なにをしているところ?
- 「VRChat」上で開催されているイベント情報の発信。
時期
2023年9月11日
詳細
「カレンダー」という形で、日夜とてつもない数が開催されているVRChat有志イベントを紹介しているインフラサービス。イベント情報の登録もできるため、イベンターにはなくてはならないもの。「VRChat」内で使えるアセットも配布されている。
公式パートナーシップ契約締結により、カレンダーアセットが刷新され、機能面が大きく向上した(旧版は2023年末に利用停止へ)。また、VRChatのパートナーイベントとも連携を強化するとのことで、その際の法人窓口をポリゴンテーラーが引き受けるとのこと(運営体制はそのまま)。個人運営のインフラと法人がタッグを組んでいると捉えれば自然か。